はじめに
システム開発では、軽微な変更であってもデグレや副作用が発生し、最終検証のコストが膨らむことがあります。しかし、タイトなスケジュール下では十分な確認プロセスを回すのが難しく、低コストで実施できる検証手段が求められる場面も少なくありません。
そこで今回試してみたのが agent-browser です。agent-browserはVercel が 開発したCLI ツールで、AI エージェントが効率的にブラウザテストや動作確認を行えるように設計されています。
従来のブラウザ自動化ツール(Playwright MCPなど)では、操作の度にページ全体のアクセシビリティツリー情報が返されるため、AIが処理できるコンテキストを圧迫してしまうという課題がありました。agent-browser はこの問題を解決するため、必要なときだけ状態を確認できる仕組みを採用しています。
「デグレや意図しないバグを減らす助けになりそう」「導入が手軽で、忙しい案件でも試しやすそう」と感じたため、実際に触って使用感を確かめてみました。
本記事では、セットアップから基本操作、さらに Claude と組み合わせた動作確認の流れまでを、手順を踏んでご紹介します。

セットアップ
agent-browser のインストールは npm で簡単に行えます。 (npm推奨)
npm install -g agent-browser
agent-browser install
agent-browser install コマンドで、内部で使用する Playwright の Chromium ブラウザがインストールされます。
インストールが完了したら、バージョン確認で動作確認を行います。
agent-browser --version
正しくバージョンが表示されれば、セットアップ完了です。
基本的な使い方
ブラウザを開く
まずは基本的なコマンドから試してみます。open コマンドでブラウザを起動し、指定した URL を開きます。
agent-browser open <https://example.com>
ブラウザウィンドウは表示されませんが、バックグラウンドで Playwright が起動し、指定した URL を開いています。( --headed コマンドをつけることでブラウザウィンドウを表示できます。)開いたブラウザを閉じたい場合にはclose コマンドを使用します。
ページの状態を確認
現在開いているページの要素構造を確認するには、snapshot コマンドを使用します。
agent-browser snapshot
実行結果の例:
- document:
- heading "Example Domain" [ref=e1] [level=1]
- paragraph: This domain is for use in illustrative examples...
- link "More information..." [ref=e2]:
- /url: <https://www.iana.org/domains/example>
注目すべきは [ref=e1] や [ref=e2] という部分です。これは各要素に付与された参照 ID で、この ID を使って要素を操作できます。CSS セレクタを書く必要がなく、snapshot の結果から直接要素を指定できるため、AI にとって扱いやすい設計になっています。
snapshot → 参照 ID で操作という流れが agent-browser の基本的なワークフローになります。
その他の便利なコマンド
agent-browser click @e2 # 取得した参照@e2の要素をクリック
agent-browser fill @e3 "test@example.com" # 参照@e3の入力欄にテキストを入力
agent-browser get text @e1 # @e1 のテキスト取得
agent-browser screenshot page.png # スクリーンショットを保存
agent-browser close # ブラウザを閉じる
Claudeと組み合わせて使ってみる
Claudeが agent-browser を適切に使えるように、プロジェクトに設定を追加します。
公式の SKILL.md を使用
agent-browser の公式リポジトリには、 SKILL.md ファイルが用意されています。これをプロジェクトに配置することで、 agent-browser の使い方を教えることができます。
mkdir -p .claude/skills/agent-browser
curl -o .claude/skills/agent-browser/SKILL.md \\
<https://raw.githubusercontent.com/vercel-labs/agent-browser/main/skills/agent-browser/SKILL.md>
詳細は公式SKILL.mdを参照してください。
AGENTS.md / CLAUDE.md
公式 README で紹介されている、AGENTS.md / CLAUDE.md 向けのシンプルな記載例を使用することもできます。
## Browser Automation
Use `agent-browser` for web automation. Run `agent-browser --help` for all commands.
Core workflow:
1. `agent-browser open <url>` - Navigate to page
2. `agent-browser snapshot -i` - Get interactive elements with refs (@e1, @e2)
3. `agent-browser click @e1` / `fill @e2 "text"` - Interact using refs
4. Re-snapshot after page changes
実際のタスク実行
Playwrightの公式デモサイト(TodoMVC)を使って、agent-browserの実際の動作を確認してみます。
使用サイト:https://demo.playwright.dev/todomvc/
Claudeへの指示
<https://demo.playwright.dev/todomvc/> にアクセスして、
「agent-browserのテスト」というTodoを追加し、完了チェックを入れてください。
その後、完了したタスクが1件になっていることを確認してください。
実行されたコマンド
# ページを開く
agent-browser open <https://demo.playwright.dev/todomvc/>
# ページ構造を確認
agent-browser snapshot -i
- link "real TodoMVC app." [ref=e1]
- textbox "What needs to be done?" [ref=e2]
- link "Remo H. Jansen" [ref=e3]
- link "TodoMVC" [ref=e4]
# タスクを追加
agent-browser fill @e2 "agent-browserのテスト"
agent-browser press Enter
# 追加後の状態確認
agent-browser snapshot -i
- link "real TodoMVC app." [ref=e1]
- textbox "What needs to be done?" [ref=e2]
- checkbox "❯Mark all as complete" [ref=e3]
- checkbox "Toggle Todo" [ref=e4] # Todoアイテムの
チェックボックス
- link "All" [ref=e5]
- link "Active" [ref=e6]
- link "Completed" [ref=e7]
- link "Remo H. Jansen" [ref=e8]
- link "TodoMVC" [ref=e9]
# 完了チェックを入れる
agent-browser check @e4
# 状態が変わったので再度snapshot
agent-browser snapshot -i
- checkbox "Toggle Todo" [ref=e4] [checked]
- button "Delete" [ref=e5]
- link "All" [ref=e6]
- link "Active" [ref=e7]
- link "Completed" [ref=e8]
- button "Clear completed" [ref=e9]
# 完了タブに移動
agent-browser click @e7
# 完了数を確認
agent-browser get count ".todo-list li"
=> 1
# スクリーンショット保存
agent-browser screenshot todomvc-completed.png
# 終了
agent-browser close
コマンドの出力から、タスクが正常に追加され、完了状態になったことが確認できました。
活用シーン
自動テストの補助
手動で書くのが面倒なE2Eテストの作成を、AIに任せることができそうです。agent-browserでは「この機能が正しく動くか確認して」という自然言語の指示だけで済みます。テストの意図を記述しておけば、UIの細かい変更にAIが自動で対応してくれるため、保守の手間が大幅に削減できそうです。
開発中の動作確認
新機能を実装した後、「この機能が正しく動いているか確認して」とAIに依頼することで、手動確認の手間を削減できます。CLIで完結するため、開発フローを中断せずにブラウザ動作を検証できる点も便利です。
CI/CD への組み込み
CLIツールとして設計されているため、CI/CDパイプラインに組み込みやすいのも特徴です。デプロイ前の自動チェックや、定期的な動作確認に活用できそうです。
まとめ
agent-browserは、AIエージェントがブラウザを操作するための軽量なCLIツールです。
snapshot → 参照IDで操作という流れがシンプルで、 Claudeとの連携も公式が提供するSKILL.mdまたはAGENTS.mdを配置するだけで始められるため、導入のハードルが低い点も魅力です。
特に、デグレや意図しないバグが起きやすい状況では、人間が毎回フルで確認する前に、AI に“ざっと動作確認”を任せる という使い方が現実的だと思います。
導入が軽いぶん、忙しい案件でも「まずはこの画面だけ」「このフローだけ」と小さく取り入れやすく、確認の抜け漏れ対策としても相性が良さそうです。
今後は、CI/CDでの自動テストへの組み込みや、 プロジェクト固有のワークフローに合わせたSKILLのカスタマイズなども試してみたいと思います。









