「CMSについて考える」シリーズ、早くも第3弾です!
前回は主要なCMS(WordPressやMovable Type、Drupal、BASE、EC-CUBEなど)について、それぞれの強みや適したプロジェクトについてご紹介しました。
> 用途別にCMSの種類を見てみよう【CMSについて考える_その2】
(第1弾はこちら> CMSっていつからこんなに便利になったの?歴史をサクッと振り返ろう!【CMSについて考える_その1】)
今回は一歩進んで、CMSが実際に解決できる問題と、逆にCMSだけでは対応しきれない問題について考えてみました。CMSは万能ツールではありませんが、その特性を理解することで、プロジェクトに最適なツール選びができるようになるはずです。
CMSが解決できる問題
CMSはさまざまな課題を効率的に解決してくれるツールです。たとえば、以下のような問題を解決することができます。
- 効率的なコンテンツ管理
CMSは、たくさんのページやブログ記事を一か所でまとめて管理できるしくみになっています。たとえば多くの商品を扱うネットショップでは、商品の説明文や画像、値段などの情報を管理画面で簡単に編集できます。
また、更新した情報は自動的に関連するページすべてに反映されるため、手作業による修正もれなどのミスを大きく減らすことができます。
- バージョン管理機能
ほとんどのCMSには、コンテンツの変更履歴を記録する機能があります。この機能を使うことで、前に公開した内容を見直したり、必要に応じて過去の内容をもう一度公開したり、以前のバージョンに戻したりすることができます。
この機能は特に複数の人でコンテンツを管理する場合や、長い期間にわたってコンテンツを運用する場合にとても役立ちます。コンテンツがいつ、どのように変わったかを確認し、必要なときに過去の状態に戻すことができます。
- ユーザ権限管理
多くのCMSでは、コンテンツを作る段階から公開するまでの流れを管理するために、それぞれの人の権限を設定できます。これにより、作業の分担がはっきりし、ふさわしくない内容が間違って公開されるリスクを減らせます。
たとえば、記事の作成者、編集者、承認者、公開者といった役割を設定することで、コンテンツの質を保ち、作業の流れをよくすることができます。大きなチームや組織での運用において特に大切な機能です。
CMSでは解決できない問題
一方で、CMSにも限界があります。以下のような問題は、CMSだけでは十分に解決できないこともあります。
- 高度なセキュリティ対策
CMSには基本的なセキュリティ機能が備わっていますが、より高いレベルのセキュリティが必要な場合には限界があります。特に企業の機密情報を扱うウェブサイトや、金融情報を扱うシステムでは、CMSの標準機能だけでは不十分なことが多く、独自のセキュリティ対策を追加する必要があります。
また、オープンソースCMSの場合、プラグインやテーマの脆弱性が攻撃の対象になることもあり、定期的な更新やセキュリティ対策をしっかり行うことが大切です。

- 高いデザイン性が求められるページ制作
CMSはあらかじめ用意されたデザイン(テンプレートやテーマ)を使って効率よくページを作ることができますが、完全にオリジナルのデザインや複雑な動きが必要な場合は、公開されているテンプレートやテーマだけでは物足りないことがあります。このような場合は、CMSと独自開発を組み合わせたハイブリッドなアプローチが効果的です。
CMS導入のメリットとデメリット
CMSを導入する際には、以下のようなメリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。
メリット
- 専門的な技術知識を必要としない
普遍的なデザインの場合、HTMLやCSS、JavaScriptなどの知識がなくても、Webサイトの運営や変更ができます。特にノーコードやローコードのCMSは初心者でも簡単な操作で、それなりのWebサイトが作れます。
ただし、前述の通りカスタマイズを行う場合はある程度の技術知識が必要になります。そのためCMSは初心者に優しい一方でオリジナリティを求める場合は相応の知識が必要となります。
こういった「技術の民主化」により、マーケティングチームやコンテンツ制作者が直接ウェブサイトを更新できるようになり、技術チームへの依存度が低減します。結果として、コンテンツの更新回数が増え、最新の情報を素早く発信することが可能になります。
- コスト削減の可能性
スクラッチでWebサイトを開発する場合、要件定義、設計、開発、テストといった工程が必要であり、さらに専門のフロントエンド技術知識や、場合によってはバックエンド技術知識、高度なインフラ知識が必要となり、開発コストが高くなることがあります。一方でCMSを導入することで、初期設定や基本機能がすでに揃っているため、開発コストや時間を大幅に節約できます。
さらにオープンソースCMSは無料で利用でき、プラグインやテーマを利用することで、コストパフォーマンスに優れたWebサイトを構築することが可能です。特に中小企業やスタートアップにとって、限られた予算内で質の高いウェブサイトを構築できることは大きなメリットと言えるでしょう。
- マルチデバイスでの対応が容易になる
CMSはレスポンシブデザインをサポートしており、PC、スマホ、タブレットといった様々なデバイスに適した表示を自動的に調整してくれます。またヘッドレスCMSでは、APIを利用してモバイルアプリやIoTデバイスにもコンテンツを配信できるため、複数のチャネルで統一された体験を提供することが可能です。

デメリット
- カスタマイズが制限される
前述の「解決できない問題」でも挙げた通り、CMSは標準的な機能を使用できる一方で、特殊な要件に対応する場合は使用が難しいことがあります。たとえば、独自のデザインや複雑な業務の流れを再現する必要がある場合、プラグインやテーマだけでは対応できず、専門的な開発スキルが必要になります。そのため、CMSの機能で要件を満たすことができるか事前に確認する必要があります。
- ツールに慣れるための時間が必要
CMSは操作が簡単とされていますが、慣れるまでには一定の時間がかかることがあります。特に初めてCMSを利用する場合、管理画面の操作方法や機能の使い方、何をどこで操作することができるのかを理解するために学習が必要です。またプラグインやテーマは非常に多くの選択肢があるため、最適な組み合わせを見つけるための試行錯誤や経験が求められることもあります。
まとめ
CMSは確かに便利なツールですが、万能というわけではありません。効率的なコンテンツ管理やバージョン管理機能、権限設定など多くの問題を解決してくれる一方で、高度なセキュリティ対策や独自性の高いデザインは解決できない場合もあります。
自社のニーズをしっかり見極め、CMSの特性を理解した上で導入を検討するのがベストなアプローチとなります。
次回はいよいよ実践編として、CMS運用のベストプラクティスについてお届けします。
お楽しみに!