はじめに
近年、AIを活用したテスト自動化ツールへの注目が高まっています。
本記事では、私たちが構築・運営している人材データベース「ELAND」プロジェクトにおいて、AIテスト自動化ツール「MagicPod」を導入し、実際に活用した経験をもとに得られた知見を紹介します。
MagicPodを使ったWebアプリの回帰テスト自動化では、「導入の手軽さ」や「テスト工数の大幅な削減」といった大きな効果を実感しました。一方で、テストケースの作成にかかる初期工数といった課題もありましたが、「MCPサーバー」の活用により、その解消も見えてきています。
「実際のところどうなの?」と感じているエンジニアの方に、リアルな導入体験をお届けできればと思います。
MagicPodとは?
MagicPodは、株式会社MagicPodが提供するクラウド型のAIテスト自動化プラットフォームです。ノーコードで操作できる点が最大の特徴で、プログラミングの専門知識がなくても、Webサイトやモバイルアプリのテストを直感的に自動化できます。
この特性により、ソフトウェア開発における品質保証(QA)業務の負担を大きく軽減し、開発チームがより短いサイクルで高品質なサービスをリリースできるよう支援してくれます。テスト自動化にハードルを感じていたチームにとっても、導入しやすい選択肢と言えるでしょう。

まずはやってみた!MagicPodでテストケース作成
私たちは、以下のような形で、MagicPodを実際のプロジェクトに導入し、検証・活用を進めました。
- ELANDプロジェクト(Webアプリ)にて導入
- 検証環境にて利用
- CI/CDパイプラインに組み込み、リリース時の回帰テストとして自動実行
- ELANDプロジェクトにて、テストケース13本を作成し、実行
- モバイルアプリに関してはトライアルを実施し、エミュレータ上でのテスト実行を確認
このような取り組みの中で、今回は「テストケースの作成」についてまとめました。ここからは、実際にどのようにテストケースを作成したのか、その手順や工夫、直面した課題などについて詳しく紹介します。
- MagicPod の起動
右上の 「起動」 ボタンを押します。

テストしたい URL を入力 します。

起動すると、以下のような画面になります。
左側:テストのステップを入力するエリア
右側:実際の画面

- ステップの作成
ログイン処理を 共有ステップ として登録します。
「実行」 ボタンを押すと、右側の画面がステップ通りに動作します。
画面の右側には 「要素選択」 などの機能があり、要素を選択しながらテストステップを作成できます。
このように要素を選択して、入力して、テストのステップを完成させます。
- MagicPod のテストステップ

MagicPod では、以下のような操作が可能です。
- 画面操作:クリック、スクロールなど
- UI要素の確認:
- 指定の要素が存在しない場合、ログを出力したりテストを終了させることができます
- テキスト入力:指定の入力欄へ文字を入力
- 変数の使用:
- CSV の方が使いやすい(データ駆動テストに適用可能)
- 自動でfor loop
- 条件分岐 (if文): 画面の状態に応じて処理を分岐
- エビデンス確認
実行結果から以下のようなエビデンスを確認することができました。

MagicPodを導入して感じた効果とメリット
MagicPodを実際に導入・活用してみて、特に印象的だったのはその「手軽さ」と「実用性」です。以下に、実際に使ってみて感じた主なメリットをまとめます。
- インストール不要で導入がスムーズ
MagicPodはクラウドベースのサービスのため、ソフトウェアのインストールやサーバー準備といった初期セットアップが一切不要です。アカウントを登録すれば、すぐにブラウザ上でテストの作成・実行を始めることができ、環境構築の手間が大幅に削減されました。
- 回帰テストの自動化で工数を削減
これまで手動で行っていた回帰テストをMagicPodで自動化することで、人的作業が不要になりました。また、テスト実行時のエビデンスも自動で取得できるため、報告用のキャプチャ作成などの付随作業も不要になり、QAの効率が大幅に向上しました。
- 直感的なUIで誰でもテスト作成が可能
プログラミング知識がなくても画面を見ながら簡単にテストケースを作成できます。実際、現場のメンバー全員がスムーズに対応できるようになりました。
- テスト実行における制約が少ない
画面操作に関するテストで「実施できないケース」は今のところなく、多様なパターンに対応できています。柔軟性の高さも大きな魅力です。
- 安定した製品品質
これまでのところ、大きなトラブルや想定外の挙動もなく、期待通りに動作しています。製品としての完成度も高く、安心して現場に取り入れられるツールだと感じました。
実際に使ってみて感じた課題と今後の検討ポイント
MagicPodを導入して多くのメリットを実感できた一方で、現時点でいくつかの課題も見えてきました。今後の改善や運用の工夫が必要だと感じた点を以下にまとめます。
- テストケース作成は基本的に手動で実施
MagicPodは直感的なUIで操作できる反面、テストケースの作成は画面を操作しながら一つひとつ手動で行う必要があります。複数のパターンや画面がある場合、初期の作成に一定の時間と労力がかかる点は考慮が必要です。
- テストケースのコードエクスポート/インポートができない
プロジェクト内でMagicPodを試した2025年4月時点では、作成したテストケースをコードベースでエクスポートしたり、他の環境にインポートしたりといった操作ができませんでした。そのため、環境間での再利用やバージョン管理といった点では柔軟性に欠ける印象があります。
- モバイルアプリにおける実機テストの方法が未確立
モバイルアプリについては、トライアルの中でエミュレータを用いたテスト実行には成功しましたが、実機でのテスト実施方法については弊社内の運用として確立できていません。今後の検証・対応が必要なポイントです。
まとめ:MagicPod導入を通じて見えた可能性と今後の展望
MagicPodをELANDプロジェクトに導入したことで、テスト自動化における導入ハードルを大きく下げ、回帰テストの効率化や品質向上といった確かな効果を実感することができました。特に、誰でもテストを作成できる点は、開発現場における属人化の解消にもつながると感じています。
一方で、テストケース作成の自動化やモバイル実機テストの対応など、今後の改善余地もいくつか見えてきました。こうした課題に対しては、継続的な検証と運用フローの見直しを進めながら、より高精度かつ柔軟なテスト自動化体制を構築していく予定です。
AIテスト自動化ツールに興味のある方や、導入を検討している方にとって、本記事が具体的なイメージや判断材料の一助となれば幸いです。
▶︎ ELAND
モダンスタックを活用した人材データベース(https://eland.jp)
ELANDの活用イメージはこちらの記事でも紹介しています。
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